「ピアノを弾くとき以外はロブスターの模型をかたときも手放さない」だとか「飛行機が嫌いすぎて、ロシア全土を車で旅して、ウラジオストックから日本に来る」だとか。大体ピアノもほぼ独学で、音楽学校に入るのも22歳になってからのこと(しかも、3回も退学処分をくらっている)。スタジオ録音も大嫌いで、現在耳にすることのできる彼の録音の大部分がライヴ録音だ。そんな変人だから、プロコフィエフの作品と相性が良いのは当たり前の話なのかもしれない。プロコフィエフ作品のフランス風のエスプリと前衛的なピアニズムの複雑な絡み方が、リヒテルの演奏だと実に明晰なものとして現れてくる。

笑ってしまうのがグールドが「一度カナダに会いに来てくれないか」と手紙を書いて送ったのに対して、リヒテルが「お前がもう一回モスクワに来い。そしたら俺も行ってやるよ」とつき返すところ。変人同士認め合うところがあったらしく、どちらも「あいつはすげぇ」と賞賛していたそうな。


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